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~ 観劇、鑑賞の記録。リンク集そしてデータベース ~
映画「M」
10月某日 映画「M」 ユーロスペース
■公式HP

*夫と子供と郊外の一軒家に暮らす、一見幸せな妻。しかし夫婦はセックスレス。妻は出会い系で援助交際を始める。偶然その妻と知り合った少年は、虐待を受ける母をかばって父を殺した過去を持っていた。そして少年はその妻に母の姿を重ねる。妻は援助交際が地元のヤクザにばれて、脅迫され売春婦として客を取ることになる。それを知った少年は助けようと試みるが、妻はその境遇にある種の快楽を憶え始めていた。

現実の曖昧さというものを繕わずに正面から撮っている。主演の美元高良健吾の不安定さが、新人という部分なのか演出なのかは解らぬが、その現実の曖昧さを体現していた。きちんと整理がついていないであろう妻の秘めた快楽を、全く認識できない少年の目線に絡めて描くあたりは巧い。無理にその快楽を説明するポジションの役を作らず、あぶり出すようにMという快楽を内と外から描き出していた。
ただヤクザ役の田口トモロウがあまりにもはまり役過ぎて、主演二人とのバランスが取れてなかった感が。石川KINか佐野和宏で観たかった。
脇で出ていたなすびがかなりイイ! 舞台観たいな~。

全国で順次公開だそうだ。開けなくていい扉が開いてしまうかもしれません。観劇はお気を付けて(笑)

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テーマ:日本映画 - ジャンル:映画

映画「人が人を愛するというどうしようもなさ」
10月某日 映画「人が人を愛するというどうしようもなさ」銀座シネパトス
■公式HP

*人気女優は実生活で浮気している夫との仲に悩んでいた。そして映画で人気女優が俳優の夫との破綻してゆく愛を描くという、その現実をなぞるような作品に、自分と夫と愛人がそのままの役で出演するということになる。その映画の中で女優を演じる女優の役は、心を病み始め街で売春を始めるというものだった。
劇中劇の中の劇中劇、虚実渡りの愛憎劇。

前作「花と蛇」の2作は、脱いでるシーン以外の主演の演技がどうにも……だった。今作の喜多嶋舞は「GONIN」での壊れっぷりが見事だったのでちょっと期待していた。いや~想像以上の壊れっぷりと脱ぎっぷり。凄い大開脚。
作品は、夜、雨、ネオン管、廃屋、といった石井隆の世界感で満たされた。やっぱり石井作品はパリの曇り空の下なんかで撮ってもつまらない。全シーン夜と屋内という、ある種の閉鎖感が独特の味わいを産むのだ。
内容はネタバラシになってしまうのであまり記さないが、喜多嶋舞の少しづつ狂気が前に滲んでくる佇まいは圧巻。永島敏行も「夜がまた来る」以来の石井作品だが、どんとした役者っぷりが良い。この“どん”とした感じがないと狂気との対比がなくなってしまっただろう。常連組の竹中直人も良し。愛人役の新人女優が、ただの脱げる若い女優、というポジション以上のものが何もなかったのが残念。

で、この映画の写真集というのがある。しかし厳密に言うと写真集ではない。ムービーのフィルムのコマからいいシーンを集めて作った本なのだ。通常ムービーの解像度は静止画(写真)の数分の1程度と低いのだが、この作品で使われたハリウッド仕様のデジタルムービーカメラは、とんでもなく美しい解像度で、通常このような映画の写真を撮るカメラよりも遙かに美しい。まあ値段がひと桁違うのだから仕方ないが。でもこれが主流になっちゃたら、私のような舞台なんぞを撮っているカメラマンは必要なくなっちゃうな……。

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GONIN コンプリートボックス
石井隆

DVD

¥ 7,980(税込)
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テーマ:日本映画 - ジャンル:映画

無声映画「第590回無声映画鑑賞会」
9月某日 無声映画「第590回無声映画鑑賞会」 門仲天井ホール
「お傳地獄」(活弁・桜井麻美
「折鶴お千」(活弁・澤登翠

■無声映画マツダ映画社

「お傳地獄」は愛する亭主を女房が人を殺めてまで守ろうと大暴れをする物語。入浴シーンというサービスもある(笑)珍しい作品。
やはり所々フィルムの消失もあり、哀しい女の物語なのに、若干喜劇タッチな部分が前に出てしまう状態。それならそうで、そこを楽しんでしまえというような活弁がばっちりはまっていた。

名作「折鶴お千」は昨年、澤登一門の一番弟子・片岡一郎で観たのだが、今回は師匠の活弁で。
マニアの集う会故にストーリー説明的な部分は抑えめにして、心情を叙情的に語る比重が高かったようだ。
何度観ても山田五十鈴の美しさと色香は当時18歳には思えない。無声映画としての貴重性であるとか言う前に、やはり作品として名作である。
活弁付きのDVDが発売されるそうだ。生で活弁付き無声映画を観る機会のない方々、これを是非!



テーマ:映画★★★★★レビュー - ジャンル:映画

映画「22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語」
9月某日 映画「22才の別れ Lycoris 葉見ず花見ず物語」テアトル新宿
■公式HP

*福岡の商社に勤める44才の男は、近所のコンビニに勤めていた少女に援交を持ちかけれれる。話すうちに彼女が22年前に別れた恋人の娘であることを知る。
男は少女に何もせぬまま交際を始め、転勤予定の香港に結婚してついてこいと告げる。しかし少女には同居する同級生の男がいた。
伊勢正三(かぐや姫・風)の「22才の別れ」をモチーフにした、大林宣彦監督「なごり雪」に続く大分三部作の第二作。

たぶんじんわりしみじみするような作品だろうが、なぜか終始泣きっぱなし(苦笑)。主人公の男と歳が近いせいもあるだろうか、二十歳前後の青春模様に重なるあれこれがあったり、脳裏をかすめる思いがあったりと、心中ざわざわしながらの鑑賞。

画面に収まりの悪いキャスティングというのは、どんな作品にも大なり小なりいるのだが、大林作品にキャスティングのハズレ無しである。今回正直、大林作品に筧利夫って……と思っていたのだったが、なんかめちゃめちゃ良かった。そしてやはり新人二人も抜群。
大分三部作の「なごり雪」も大好きで、その舞台とリンクするシーンなどもあり、改めてDVDで見直す。やはり泣く。
両作品とも30代後半になった男は観るべし!楔のように胸に刻まれる作品である。

大分三部作の三作目は「ささやかなこの人生」か「君と歩いた青春」か。楽しみである。

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テーマ:日本映画 - ジャンル:映画

映画「童貞。をプロデュース 」
8月某日 映画「童貞。をプロデュース 」池袋シネマロサ
■公式HP

*「童貞。をプロデュース 1 ~俺は、君のためにこそ死ににいく」

映画大好きで夢見がちな童貞K君。片思いの女友達に告白し愛を実らせ、男になろう、という筋書きをプロデュースするドキュメンタリー。
*「童貞をプロデュース2 ~ビューティフル・ドリーマー」
ゴミ廃棄場に勤めながら、ゴミの中からグラビア雑誌を拾い集め、それを切り取りスクラップにするのが生き甲斐という童貞U君。恋するアイドルのために作った短編映画を本人に見せるため上映会を催すことに、というドキュメンタリー。

会場は大入り満員。久々に前後左右にお客が座っている状況で映画を観る(苦笑)。会場にはカップルや女性客も多く、笑いに包まれた上映だった。
2週間限定レイトショーのはずが、大入りにつき1週間上演延期が決まったそうだ。これは宣伝の上手さのたまものだ。チラシの的確な作り方、そして大量配布、プレイベントの開催など、広告屋の身としてはこの宣伝活動の情熱と正しさを多くの業界関係者に見習って欲しい。作品が面白くて、宣伝が行き届いていればお客は入るのだよ!

で作品はというと、理想というか能書きが先に立ち恋愛もままならない童貞野郎がのうっとうしさ満開、なのだが、見終わると彼らの幸せは誰にも否定できないし、彼らの美しさを誰も汚してはいけない、と思ってしまうのだ。そして何故か切ない幸福感を憶えるのだった。

最近女性シンガーが“僕”という少年・青年の視点から書いた詞の曲をよく唄っている。繊細さを描くのに、少女・女の視点ではもう難しくなっているのだろう。
繊細な男達の生き様を撮りきった秀作。老若男女問わず観るべし!

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テーマ:日本映画 - ジャンル:映画

映画「天然コケッコー」
8月某日 映画「天然コケッコー」新宿武蔵野館
■公式HP


*過疎化の村の学校は小学校と中学校が一緒になっても7人という、家族のような学校だった。そこに東京から転校してきた中学二年生の男子。同じ中二の女子は初めての同級生。初めは馴染めずにいた男子も田舎の暮らしに馴染み初める。
田舎の人間のふれあいと、少女の成長と初恋を静かに描いた、くらもちふさこの漫画を原作とした作品。

今や売れっ子となった山下敦弘監督作品。鑑賞中、映画が終わって外の新宿の街に出たくないな~、とふと思ってしまった。このまま高校生編も続けて撮って5時間の大作になろうが、まったく問題ない心地よさだった。是非続編の高校生編も撮って頂きたい。

あらすじやら出演者やら監督やら、ほとんど知らずに勘をたよりに作品を選ぶので、意外なキャストに驚いたりする。大内まりの出演にはびっくり。前作の「青い魚」が好きだったので10年ぶりの役者復帰は嬉しい。
小劇場俳優の黒田大輔、小劇場出で監督であり脚本家としても注目の末廣哲万が、めちゃめちゃいい味を出している。こういう俳優と佐藤浩市が一緒に違和感なくフレームに収まってる心地よさもこの作品の魅力だろう。
主演の夏帆、役のイメージとも風景とのマッチングもベストなのだが、ちょっと上手すぎの感じが。テレビドラマ「ケータイ刑事」の頃のたどたどしさが残っていたら、と思ってしまった。

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テーマ:観劇 - ジャンル:学問・文化・芸術

映画「セキ☆ララ」
8月某日 映画「セキ☆ララ」アップリンクファクトリー
■公式HP


昨年見逃していたので鑑賞。DVDにもなっていたが映画は映画館で観なければいかんのだ。

*在日3世のAV嬢が生まれた町と育った町を尋ね、そこで初めてのAV撮影をするというドキュメンタリーと、留学中の中国人AV譲と、在日2世のAV男優が中華街でデートした後に絡みの撮影をし、男優の家でまたひと絡みするというドキュメンタリーの二本立て作品。監督・松江哲明も日本に帰化した在日3世。

ゆる~いドキュメント。赤裸々に深層心理に迫るという迫力はまったくなし(笑)。そのゆるさ故に深層心理がポロッとこぼれるような、そのゆるいこぼれ方もまた赤裸々なのかもしれない。
在日というテーマを扱うことで、「パッチギ!」のように眉間にしわを寄せて、隠された真実を描き出す、というふうにならなければ嘘、ということではあるまい。
今も在日の各家庭に残る風習を監督と女優が何気なく話すゆるいシーンなどに、21世紀今現在の在日のリアリティの、ある側面は正確に映し出されているような気がする。「在日」って何だ! じゃなく、「在日」ですけど何か? という具合だろうか。
在日?日本人? どうでもいいじゃんそんな事、と思ってしまうのは不謹慎なのか?

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セキ☆ララ


DVD

¥ 3,591(税込)
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テーマ:日本映画 - ジャンル:映画

映画「パッチギ! LOVE & PEACE」
8月某日 映画「パッチギ! LOVE & PEACE」シネカノン
■公式HP


*1974年、東京枝川の朝鮮人の町に住む一家。サンダル工場を営みながら細々と暮らしていたが、孫は難病に冒され治療には大金がかかることになり、若い父親は金塊の裏取引に手を染め、若い叔母は芸能界で活躍し始める。朝鮮人学校と日本人学生の喧嘩に巻き込まれ、ひょんなことで朝鮮人に荷担して、この一家と仲良くなった田舎者の男は、若い叔母に想いを寄せながら、若い父と友情を深めていく。
戦争に巻き込まれた一家の過去と、社会の中での差別や偏見を織り交ぜながら、家族・人間の絆を描いた作品。

井筒作品では「のど自慢」が好きだったが、続編の「のど自慢2 ビッグ・ショー!~ハワイに唄えば~」は期待はずれだった。「パッチギ!」は詰め込み過ぎで消化不良の感じと、キャスティングがどうにも……だった。ので、続編となる今作、まったく期待していなかった。が、その期待を大きく裏切る大秀作。
前作で一番不満だったのが、朝鮮から渡ってきた先代の苦悩や、大阪で暮らしていた時分の困難が言葉で語られるだけで、説得力に欠けて見えた部分だった。今作では1944年の戦下のあまり語られることの無かった植民地での事実や、劇中で撮られた特攻隊の映画での命の扱われ方など、しっかり映像で見せて説得力のある構成となった。
前作のキャストが、ほとんど続編に出たくない、という意志を示したがための今回のストーリーとキャストとなったそうだ。よくぞ出たくないと言ってくれた、と思うほど、ワンシーンのカメオ出演者に至まで今作のキャスティングは良かった。何より藤井隆が秀逸。「カーテンコール」観れば良かった……。

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のど自慢
井筒和幸

DVD

在庫切れ
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テーマ:日本映画 - ジャンル:映画

映画「図鑑に載ってない虫」
7月某日 映画「図鑑に載ってない虫」テアトル新宿
■公式HP


*アングラ誌の編集長から、「死にモドキ」という物を使って臨死体験をしろという命令が下り、フリーライターの若い男は謎のアル中男を引き連れ「死にモドキ」を探しに出かける。途中、ヤクザと失職中のSM嬢とも道連れになり、奇想天外な事件に巻き込まれながら、「死にモドキ」という虫を捕まえることが出来た。そして臨死体験の実験は始まったが……。

「時効警察」で名を知らしめた三木聡の最新作。「亀は意外と速く泳ぐ」がかなり好きだったのだが、「時効警察」はちょっとイマイチだった。で、今作はキャラ設定がどうにも暑苦しく、湿度の高さが脱力感を邪魔しているような。三木作品のトーンと合わない役者も多いような感じが。松尾スズキ・岩松了・ふせえり・松重豊は良かった。となると舞台出の役者は三木作品には合うと言うことか。

問題は次回作「転々」を観るかどうかだ。テレビでも映画でも三浦友和出演作に外れ無しという個人的嗜好があるのだが、予告編を見る限りどうも湿度が今作と似ているような……どうしよう。

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時効警察 DVD-BOX
三木聡

DVD

¥ 15,138(税込)
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無声映画「世界の心」
7月某日 無声映画「世界の心」門天ホール
■無声映画マツダ映画社
弁士・澤登 翠斎藤裕子桜井麻美片岡一郎


弁士・澤登翠の年に一度の一門会。
弁士4人によるリレー活弁でリリアン・ギッシュ主演の「世界の心」を。

*詩人と隣に住む娘は結婚の約束を交わし、式を楽しみに待ちわびていた。そんな最中に戦争が勃発。詩人は出兵し、娘の住む村は敵に攻め入られ捕虜となる。そんな村を奪回すべく詩人は敵兵に化け、ひとり村に偵察に入るのだが……。

1918年作の、本物の戦争シーンを織り交ぜての戦争映画。大砲や毒ガスなど、リアルな戦場の映像が入る、ドキュメンタリーとしてでも今では考えられない作り方。
原爆投下をした兵士が未だ英雄とされるアメリカらしいと言えばそれまでだが、リアルな人の殺し合いの映像だからな~。無慈悲な作品だ。

リレー活弁で最後を締めた師匠・澤登翠の、いかなる場合においても戦争で苦しめられるのは、弱い一般人である。どんなことがあっても戦争を賛美してはいけない、という弁で締められた。それが日本の文化として生まれた活弁が、このような無慈悲な作られ方をした作品を語る上で出来る、最大あり最低限の役目であり特権であろう。

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